XM と 惜別の旅へ [CITROEN XM ブレーク]
16年前、彼女は、ショールームの奥まった場所に、文字通りうずくまっていた。
みたことのない、車高の極端に低いウェッジタイプのステーションワゴンだった。
そのときはハイドロで車高が沈んでいることすら知らなかった。
決して派手さはないがフォルムの存在感にただただ圧倒されて、こっそり何度も見に通った。
自分には縁の無い高級車と思ったので、勧められても、座席にさえ座らなかったのに。
車が売主に返却される1週間前、名残惜しくて家内を連れて二人で見収めに行った。
XMを見た後、家内がぽっつり言った「お金があったら買ってあげたいけど・・・・・」
当時も我が家は、貧乏だった。
でも、それを聞いてしまったら、もう我慢ができずに、金も無いのに思わず購入してしまっていた。
マニアックでもエンスーでもない単なる面食いの私が手に入れたは車は、有名(ノートリアス)な美しい金食い虫だったが、絶えずそれ以上の喜びを与え続けてくれて、日々の車貧乏にも満足していた。
そのXMが16年の時を経て、突然、大量下血した。Citroën宿命のオイル漏れが始まったのだ。
昨年は四国、九州を40日以上も車中泊旅行してきたのだから、大事に扱えば、永く付き合っていけると考えていた。
しかし、修理のため訪れたデイラーの担当者の言葉を聞いてに呆然とした。
XMは生産中止後、年数もたっているため、補修部品は既に流通しておらず、修理は不能。
漏れが酷くて車検も通らないと言うのだ。
本物のマニアのようにわたしには補修部品を事前にストックしておく余裕も無かった。
今になって途方にくれた。
車検は今月末で切れる。 いたたまれず、曇天のなか惜別の旅に出た。
最後の車中泊旅行 人かげまばらな道の駅「雄武」
すれ違う車も無いオホーツクの海岸をひたすら北上する。
もうすぐ逝くというのに、けなげにも、マセラテイ エンジンは快調で、スロットル全開の誘惑に駆られる
クッチャロ湖畔はトキシラズが弔い花のようにみだれ咲いていた
宗谷岬は雨
「坂の上の雲」のロケで満蒙原野にみたてられたサロベツ大規模集約牧場
日本海沿岸沿いに延々南下して、3日目、神威岬でようやく晴れ間、しかし強風が吹きすさんでいた
ふと、骨折した愛馬を自ら射殺する映画のシーンを思い出した
公道を走れなくなった車は、死を意味するのだろうか
車庫で眠る車は、 死体だろうか
帰ったら、埋葬できないまでも、解体業者に臓器売買される前にせめてエンブレムを外してやろうと思う
16年間、想い出を たくさん有難う 私の自慢だったXMブレーク!
タグ:最後の車中泊旅行
2011-07-21 22:12
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コメント(4)
さすが、シトロエンディーラーですね。きっぱり直らない。ですか。
実は、昔GSAとBXで似たような経験有りです。
でも、いまでも、新車のBXあったら欲しいです。
ホンダインサイトは、和風BXみたいで気に入っています。
by Flyingtak1 (2011-07-24 07:26)
tak1 さん
12年前、愛犬をフィラリアで亡くしました。
余りに悲しくて、それ以来、動物を飼うのをやめました。
XMとは16年も暮らしてきました。
美しい金食い虫でしたが、たえず、それ以上の喜びを与えてくれました。
輸血しながら、無車検でも延命させてやりたい。そんな気持ちです。
by ロートレー (2011-07-24 10:02)
はじめまして。
長年共に暮らしてきた車と別れなければならないというのは、辛いですね。
私も以前、シトロエンGSに乗っていたことがありますが、諸般の事情で結局手放しました。
それにしても、「車検が通らない」と言うのは理解できないですね。別にシトロエンのディーラーでなくても、オーナーの気持ちを理解して、古いシトロエンを整備できるお店も、あると思うのですが。
by アノニマ (2011-07-25 12:28)
アノニマ さん 訪問ありがとうございます。
整備中のアノニマさんのパナール・デイナZを拝見して、私は泣いてなんかいられないと思いました。
早速、XMを延命させてくれる整備工場を必死で探すことにしました。
by ロートレー (2011-07-25 16:09)