1970年代の2度のオイルショックを経て、国策としての原発建設が進み、24時間発電の夜間余剰電力を捌くため、電力会社主導で大々的かつ強力に進められたのがオール電化住宅の推進でした。
寒冷地住宅も入手不安定な灯油暖房を諦め、特別割引の割安な深夜電力を使った蓄熱暖房機、蓄熱温水器への切り替えが急速に進みました。
ところが、2011年福島原発事故発生により状況は一変、全国原発の稼働中止が進み、深夜電力の余剰が減少する中、ウクライナ・ロシア戦争勃発により石油ガス価格が高騰し、原発事故後、液化ガス火力発電にシフトしていた電気料金も急上昇、加えて円安が追い打ちをかけ、電力料金は急騰しています。
冬季間の暖房を深夜電力に頼るオール電化住宅の電気料金が月10万円を超える事態が頻発しているとのニュースも話題になっています。
我が家も離れの住宅をオール電化住宅として新築したものですが、自衛策として暖房を
石油FFストーブと薪ストーブに替え、深夜電力を使った蓄熱暖房機は停止しました。
そんな我が家に、電力会社から頻繁に「重要なお知らせ」届くようになりました。
中身は電気料金改定に係る言い訳文章ですが
上限価格の撤廃以降は更なる電気料金高騰の不安がつのります。
電力会社のHPを見ると、オール電化住宅からスマート電化エコキュート住宅への乗り換えキャンペーンで溢れています。
その資料によれば、蓄熱温水器をエコキュートに、蓄熱暖房機を冬型エアコンに交換すると使用電気料金が現在の3分の1近くまで安くすることが出来て、おまけに5万円から10万円の補助金まで付いています。
思わず飛びつきたくなるようなキャッチフレーズです!
かつてオール電化住宅を強力に推進した電力会社が自責の念から始めた救済キャンペーンのように見えますが、よく中身を見るとがっかりの内容なのです。
使用電力量の比較のみに注目して、他の熱源とのトータルな収支比較がなされていない不完全なものだからです。
24時間暖房が前提の蓄熱暖房機の電気使用量が冬季間上昇するのは分かるが、我が家の使用料金と比較すると、一般家庭で月の暖房料金が16万円にもなるなるのはどんな原因なんでしょう。
調べると
1.深夜電力料金の値上げは全国均一になされているわけでない
各電力会社の発電設備の構成比(原発稼働の有無)などと使用燃料のコストの違いにより、
各社の対応も様々なのです。
電気温水器を始めとする「夜間運転機器の割引廃止」を実施した電力会社は次の通りです。
・中国電力2018年4月1日
・東京電力2020年10月1日
・東北電力2021年3月末
・中部電力2022年4月1日
・四国電力2022年4月1日
・九州電力2022年4月1日
・関西電力2022年7月1日
また、北海道電力・北陸電力・沖縄電力では、2016年3月31日をもって
「夜間運転機器割引」への新規加入は終了しました。
たしかに、オール電化住宅の積極推進当時は深夜電力料金は日中料金のの2分の1以下に
優遇割引されていたので、深夜電力の割引が廃止されると電気料金は2倍にもなるわけです。
幸か不幸か
*北海道電力は「夜間運転機器割引」の新規受け入れは終了したものの、
既契約の深夜電力(「ドリーム8」)の契約は継続していますので
値上がりしたとは言え、我が家の蓄熱電気温水器は「夜間運転機器割引」を継続して
受けていることになります。
「夜間運転機器割引」がいつまで継続されるか未確定要素はありますが、現在の電気
料金支払い額をベースに、エコキュートへの乗り換え可否を検討してみます。
2.寒冷地(札幌)のオール電化住宅にとってエコキュートは
深夜電力蓄熱温水器よりエコ か?
結論
トータルコストを比較すると、我が家は現在の深夜電力蓄熱温水器を
使い続ける方がエコである!
説明
(1)北電の電気料金の節減比較例では、深夜電力蓄熱温水器の月17,600円に対して、
エコキュートは月5,700円になっています。(4人世帯例)
我が家は2人世帯なのでとりあえず半分の2,850円/月とみなす。
しかし、エコキュート温水器の設備費・施工費は60万円程度必要。
高額な設備費・施工費(寒冷地仕様)の原価償却が考慮されていない。
消費者動向調査によれば、エコキュートの更新サイクルは13.6年なので設備費の
償却額 約3,600円/月を加算した6,450円/月がエコキュートの
実質支払額/月になります。
(2)一方,最近の我が家の蓄熱温水器支払電気料金実績は、夏4,000円~冬5,000円/月程度です!
現在の蓄熱温水器をエコキュートに乗り換えても支払い経費の節減にはならない!
(3)蓄熱温水器(370L)はシンプルな構造のステンレス函体なので今後も故障なく
長期使用が可能と期待します!
以上を総合すると、現在の情勢に大きな変化がなければ、
我が家の深夜電力蓄熱温水器は取り合えずそのまま使い続けるのがよさそうです!
3.寒冷地の暖房機として寒冷地エアコンを検討する
結論
極寒地(零下10度以下)での寒冷地エアコンの使用は、現状では暖房機としての
暖房能力にやや不足するようです。(冬期間は使用電気量も2倍近くに増加)関連レポート
*厳冬期の運転には屋外設置の熱交換器の氷結防止・霜取り装置稼働が必須になる。
そのために貴重な供給電力が氷結防止装置に消費されてしまい肝心の熱交換効率が
低下することが極寒期の寒冷地エアコンの暖房能力不足の要因と思われます。
寒冷地では、高価な寒冷地エアコンに拘らず、その半額程度で入手できる通常エアコンと
FF式灯油暖房機(再生中古品4~5万円程度)とを組み合わせて使用するほうが、
年間を通してコスパに見合う優れた住環境(冷暖房)を得ることが出来そうです。
以上の論点は、エコキュート暖房機についても通じるものがあります。
高気密高断熱の寒冷地住宅は、蓄熱電気温水器も放熱を避ける関係から室内設置になっています。
深夜電力利用の寒冷地エコキュート暖房機(温水器)は大容量タンクが必要になり、設備費も高額になりますが、大気ヒートポンプで外気と熱交換する必要があることからか、
みたところ屋外設置になっていてタンクからの放熱は無視できないものがあるはずです。
熱交換器の氷結を避けるために氷結防止ヒーターへ湯を常時供給する必要もあるので湯温を保つために消費される電力は寒冷地であるほど増大します。
しかも最近、エコキュートの深夜電力割引を停止する電力会社が増えてきました。
エコキュートは高額な長期投資になりますので、地域の状況と将来を見据えた賢い選択が、ますます必要とされるでしょう。
(完)
<関連資料>
エコキュートを上手に使う
オール電化住宅で電気料金の値上がりに悩まれている方へ(ドルフィン)
https://www.ys-dolphin.jp/blog/selfcheck/5498/
寒冷地エアコン (エイト)
https://eight-inc.jp/air_conditioner/kanreichi/